システム設計から運用までの流れ
システムを導入したいんだけど、まず何からはじめたらいいのか・・・
コンピュータ用語はカタカナばかりでよくわからない。システム会社の話している言葉が理解できない。 専門用語を当たり前のようにしゃべっているので質問しにくい。恥をかいたり気まずくなるのが嫌で聞きにくい。 それに、怪しげな英語も交えて話されれるとなんだか胡散臭く感じる・・・。
システムに関する話というのは、「こちらの無知に付け込んで色々と売り込まれる気がして、本音で話せない」と 感じませんか? 確かに、そういうシステム会社が多い。 これは、システムは経営の根幹にかかわるものでありながら、システムに携わる人が、 「システム=ハードウェア+ソフトウェア」という固定観念にとらわれていることが原因です。 つまり、どうにかして自社の製品にあなたの関心をつなげようとしているのです。
システムの導入に関してまず最初にやらなくてはならないことは、次の2点だけです。
- あなたが何に困っているのか、何を悩んでいるのか、システムを導入したいと思い立った問題を明らかにする
- もし、この問題が解決した理想の状態はどのようになっているか。それを鮮明にイメージする
システムの導入で一番最初に考えることは、この問題を明らかにすることと最終目標をイメージすることです。 システムの導入はその手段にすぎません。システムの導入が目標ではなく、理想の状態に近づけるのが目標です。 ここを履き違えると、システムのためのシステム、お金ばかりかかって役に立たないシステムになってしまいます。
理想の状態を目指すのであれば、何も高額なシステムを導入しなくても、市販のパッケージソフトや表計算ソフトでも 十分かもしれません。ちょっとした工夫で何とかなるかもしれません。
理想の状態が明確であればあるほど、こうした判断にブレがありません。背骨がしっかりとした判断ができるのです。 まずはこうした判断基準をもつことからはじめてください。
システムを導入するのに、一体いくらかかるのか・・・
システムは導入予定のシステムが既製品か半製品、あるいはまったくゼロから作り上げるかによって価格や導入期間が 大きく異なります。ここでは3つの導入パターンを挙げて比較してみます。
(パターン1) もっとも安くあげる 「既存パッケージソフトの購入」
システムをもっとも安くあげるのは、既にあるパッケージソフトを購入することです。 これは、色々な会社に適合するように汎用性を持たせて作ってあります。洋服でいうと既製品、 住宅で言うと建売住宅のようなものです。こうしたパッケージソフト(箱から出してすぐに使える、 パッケージ化されているソフトなのでこういう呼び方をします)は、すぐに使えるので、 導入する期間も1週間から1ヶ月程度で済んでしまいます。また、保守契約を結んでおけば、 法律改正対応版へのバージョンアップが無償あるいは小額の費用負担で受けることができます。
価格は、パッケージソフト単体では数十万円ですが、これに利用者の人数によって加算されます。 10人程度なら高くても300万以下で大体まかなえます。
パッケージソフトは、原則、製品の改良ができません。例えば、商品の名称を100文字までにするとか、 規格名と型番を分けて表示するなど、パッケージソフトの中の能力を超えている場合はどうすることもできません。 どの会社でも使えるように、ある程度は設定により切り替えることもできますが、 あなたの会社特有の業務についてはあきらめるしかありません。つまり、融通が利かない分安く導入できる、 ということになっています。
(パターン2) 次に安くあげる 「特定業種向けパッケージソフトの導入」
次に安くあがるシステムは、特定業種向けパッケージソフトの導入です。これは先ほどのパッケージソフトを それぞれの業種に特化した形で改良されたものを製品化しています。 そのため、汎用製品では対応しきれなかった特定業種の特殊事情にも配慮して作られています。
この業種向けパッケージソフトはパッケージソフトのおよそ2倍から3倍程度になります。
パッケージソフトも業種向けパッケージソフトも開発したメーカに依頼すれば、改良してくれます。 しかし、その場合の費用は別途かかります。場合によっては、この次に説明するオーダーメードソフトと同じくらいの 費用がかかる場合もあります。また、独自に改良してしまうと、製品のバージョンアップが受けられなくなります。
(パターン3) 業務業態に沿った処理が可能 「オーダメードソフトの導入」
次は、オーダメードシステムです。これは注文住宅のようなもので、 あなたの会社の業務内容・社風にあわせて自由に作り込むことができます。 システムを導入したあとでも、どんどん改良したり、機能追加することができます。また、パッケージソフトが、 仕事のやり方をシステムにあわせることになりますが、オーダメードソフトの場合は、 今のやり方にある程度あわせて行うことも可能です。打合せから現場の方の参加を促し、要望を取り入れることにより、 コンピュータシステム導入による現場の混乱を和らげることも可能です。つまり、独自のやり方が染み付いて、 パッケージソフトのやり方に変更するのに抵抗を感じる場合に有効です。
価格は、数百万から数千万・数億円の世界になります。自由度が高い分価格はパッケージソフトよりはるかに高額です。 また、導入期間はもっとも長くなります。打合せから稼動まで、3ヶ月から1年に及ぶこともあります。
社歴が短く、やり方を変えても業務が混乱しないなど柔軟性のある組織にはパッケージソフトの導入がベストでしょう。 上得意先に対して、なにか特別な対応が必要であったり、例外処理が多くなる場合にはオーダメードソフトの導入を 検討するのがよいでしょう。 ただし、それは予算との兼ね合いで比較するべきです。できれば両社から提案・見積をとることをお勧めします。
以上の3つを説明しましたが、ここにあげたシステムは、どれも企業システムの1業務についてのものです。 1業務とは、例えば販売管理(売上伝票の入力発行、請求書の印刷)や財務会計(仕訳伝票の入力、財務諸表の印刷)などのことです。
ここ数年、大企業を中心にERPソフトという製品も一般的になってきました。
ERPソフトとはエンタープライズ・リソース・プランニングという英語の頭文字をとった略語です。
「企業の経営資源の有効活用を支援するソフト」という意味です。
難しく言うとそうなのですが、要は、財務会計を軸に販売管理・購買管理(商品の発注仕入を管理する業務)・在庫管理などを
つなげてしまったソフトウェアです。
結局、企業情報システムで処理された数字は、最終的に決算の数字に集約されていきます。 売上も売掛金も仕入も買掛・未払金も在庫棚卸高も財務諸表に表現されて企業活動の報告となります。 ERPソフトはこの一連の流れを連動させることで、1度どこかの部門が入力した数字を直接、財務会計へ仕訳伝票として流し込みます。 誰かがコンピュータに入力したものを、改めて他の人が入力し直す必要がない。このあたりが経営資源の有効活用という意味です。
ERPソフトは基本的にはパッケージソフトなのであまり融通は利きません。 しかし、外国製のソフトウェアは導入コンサルティングも含めて、数十億円というのもあり、 かなりのことがソフトウェアの設定でカバーできます。 国外に拠点を持つ大企業はこの外国製ERPソフトを導入しているとことが多いです。
これに対して国産ERPソフトもあります。価格は数千万から数億円で、
中堅企業など外国製ERPソフトがカバーしていない企業を対象にしているところが多いようです。
いずれもパッケージソフトでありながら、業務範囲が広範なため全社的な取り組み、
とくに社長はじめトップの後押しがないと導入に失敗してしまいます。
これだけあると一体どれを入れていいのかわからない・・・
まずは情報を集めることが大切です。システムの機能や価格がわからないと、
システム会社から見積もりをもらっても高いのか安いのか判断に困ってしまいます。
今は、インターネットがありますので片っ端から資料請求してみることが必要です。
情報収集を行うことにより、本当は数十万のパッケージソフトを導入することで済んだのに、
数千万のオーダメードソフトを導入してしまったなんてことも起こりかねません。
そして、情報収集ができたら一番最初に戻ってください。
そうです、システムの導入したあとの理想の状態をもう一度思い出してください。 いま、あなたの手元にあるソフトのカタログはあなたの理想に近づくために最適ですか?
理想に近いものがあれば、販売元に連絡し、見積またはシステムの説明・デモにきてもらいましょう。
カタログを読んでも分からない・・・
わからない言葉があればメモをして、販売元の人が来たときに恥ずかしがらずに聞いて見ることが大切です。 「まったくの素人ですみませんが・・・」などと言って聞いてしまいましょう。こうした機会を利用して知識を吸収していきます。
相手の会社の人も、しっかりとした知識があれば、嫌な顔をせず丁寧に教えてくれるはずです。 反対に、説明がしどろもどろになったり、答えが的確でなかったり、あるいは嫌な顔をした場合には、 その会社に依頼するのはやめた方が賢明です。的確な説明ができな場合は、 相手の担当者は単に製品のセールストークしか学んでいないか、あなたの悩みや問題点を理解する力に欠けている可能性があります。 また、嫌な顔をする場合は、今後お互い率直に話をする時に、嫌な気持ちになってしまいます。 お互い仕事をする上でマイナスになります。
相手の会社の担当者がこういう人であれば要注意です。
- 専門用語を多用して、何を言っているのかさっぱり分からない
- プレゼン資料の棒読み。自社の製品説明ばかり
- できない、難しいとばかり言う
- 担当者または担当SEがよく代わる
- 依頼した資料をなかなか送ってくれない。レスポンスが悪い
- 自社の製品のことしかわからない
話を聞いてデモを見ても、どこにしたよいかわからない・・・
理想の状態から各社の製品を比較しても判断がつかないことが多々あります。 それは、理想の状態のイメージが不明確か、あるいは、依頼しようとしている会社を信頼しきれないかのどちらかです。
今度はあなたの方から、候補の各社に理想の状態について説明する必要があります。 そうすれば、自社の製品があなたの理想に近づけるためにどのような貢献ができるのか説明できなくてはなりません。 あるいは、そのままでは使えないので代替案を含めてどのような提案ができるかというようなことが重要になってきます。
ここで注意してみていただきたいポイントは
- あなたが何に困って、何に悩んでいるか理解しようとしているか
- 自分たちの製品が適合しない場合、潔く商談を降りる姿勢があるか
- 自分たちの製品が適合しない場合でも、あなたの立場になっていっしょに考える姿勢があるか
- 自分たちの製品が適合しない場合でも、あなたのビジネスをあなたの会社のお客さんの立場に立って、別な視点で検討する姿勢があるか
残念ならが、システムの会社では1.の姿勢すらない会社が多々あります。 3.あるいは4.の姿勢をもってシステムの打合せに臨んでもらえれば、 今後のシステムの展開や事業内容の変化に伴うシステムの見直しなど、長期にわたって良好な関係が築けることになるでしょう。
もし仮に、あなたのビジネスがそれほど規模が大きくなく、パッケージソフトで十分カバーできるのであれば、 そうこだわらなくてよいと思います。あなたの会社の規模が大きくなるまで、汎用または特定業種向けパッケージソフトを徹底的に、 元をとる感覚で使い切るべきです。
規模が大きくなり、大口の得意先の要望や得意先の様々な特殊事情に合わせざるをえなくなった場合にだけ、 オーダメードソフトの導入を考えるべきです。会社の成長や事業の拡張により、少ない人員でより大きなビジネスを動かすためには、 コンピュータシステムの力が不可欠になるでしょう。そうした場合にのみ導入を検討します。 その際には、以上の4つを満たし、あなたの会社の業務を理解するソフト会社を持つことは大変な強みになることでしょう。